第1章

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《ピッー》  また機会音がして、水が止まった。でも、戸は開かない。  戸に齧り付いて引っ張っても、体当たりしてもびくともしない。鍵でも掛かってるのだろうか?  今出ないと、また何されるかわからない。  戸をガタガタとひたすら揺すった。 《コツコツ・・・・・・》  足音がした。  誰かいる!!誰でもいい!!助けてくれ!! 「誰か!?助けてくれ!!何でもする!!頼む!死にたくないんだ!!そこにいるんだろう?!」  ピタリと戸の前で足音が止まった。 「ああ。いるよ」 「助けてくれ。開けてくれ!!頼む!!」 「ムリだよ」 「なぜ?!」 「だって君。めちゃくちゃ汚れてるだろう?」 「え?!汚れてなんていないよ!ちゃんと洗濯したてのシャツを着てきたし。今日は始業式だろ?ズボンだってクリーニングから戻ったのを履いてる!!」  鼻で笑ったような声がする。 「そんなのが汚れてんじゃないよ。あんた自身だよ」 「僕?!」 「そう。おまえ自身だよ」 「どういうことだ?!僕の何処が汚れてるんだ!?」 「あはははは!!」  高らかな笑い声がする。この中に反響してさらに膝が震えだす。  喉が乾くのに、脂汗と水でシャツが肌に張り付いて気持ち悪い。 「お前わからないのか?」 「何がだよ?!出してくれよ?!」 「わからなければ、それでもいいさ。つける時間が長くなるのと、薬剤の調合を少し濃くしよう」 「どういうことだ?!」 「まぁ、キレイになる前に教えてやろう」  戸に縋る様に耳を付ける。冷たい声がこの中に反響する。 「お前。クラスの人間をけしかけて、いい子の仮面を被って長田弘をいじめてただろう?」  ゴクリと僕の喉が鳴る。 「それから、親の財布から何枚か金も取ったよな?引きこもりの兄貴のせいにして。それから、村上萌の着替えを掲示板に載せたよな?それから、鈴木隼人の靴にガラス片を入れてサッカーの試合に出れないようにしたよな?歩道橋でホームレスを蹴飛ばしたこともあるな。まだまだあるぞ。全部読み上げたら、日が暮れる」 「・・・・・・何で知ってる?!」  幾分低い声で、声が少しかすれたが挑むように聞き返した。 「お前。何故そんなことをしたのだ?」 「・・・・・・」
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