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《ピッー》
また機会音がして、水が止まった。でも、戸は開かない。
戸に齧り付いて引っ張っても、体当たりしてもびくともしない。鍵でも掛かってるのだろうか?
今出ないと、また何されるかわからない。
戸をガタガタとひたすら揺すった。
《コツコツ・・・・・・》
足音がした。
誰かいる!!誰でもいい!!助けてくれ!!
「誰か!?助けてくれ!!何でもする!!頼む!死にたくないんだ!!そこにいるんだろう?!」
ピタリと戸の前で足音が止まった。
「ああ。いるよ」
「助けてくれ。開けてくれ!!頼む!!」
「ムリだよ」
「なぜ?!」
「だって君。めちゃくちゃ汚れてるだろう?」
「え?!汚れてなんていないよ!ちゃんと洗濯したてのシャツを着てきたし。今日は始業式だろ?ズボンだってクリーニングから戻ったのを履いてる!!」
鼻で笑ったような声がする。
「そんなのが汚れてんじゃないよ。あんた自身だよ」
「僕?!」
「そう。おまえ自身だよ」
「どういうことだ?!僕の何処が汚れてるんだ!?」
「あはははは!!」
高らかな笑い声がする。この中に反響してさらに膝が震えだす。
喉が乾くのに、脂汗と水でシャツが肌に張り付いて気持ち悪い。
「お前わからないのか?」
「何がだよ?!出してくれよ?!」
「わからなければ、それでもいいさ。つける時間が長くなるのと、薬剤の調合を少し濃くしよう」
「どういうことだ?!」
「まぁ、キレイになる前に教えてやろう」
戸に縋る様に耳を付ける。冷たい声がこの中に反響する。
「お前。クラスの人間をけしかけて、いい子の仮面を被って長田弘をいじめてただろう?」
ゴクリと僕の喉が鳴る。
「それから、親の財布から何枚か金も取ったよな?引きこもりの兄貴のせいにして。それから、村上萌の着替えを掲示板に載せたよな?それから、鈴木隼人の靴にガラス片を入れてサッカーの試合に出れないようにしたよな?歩道橋でホームレスを蹴飛ばしたこともあるな。まだまだあるぞ。全部読み上げたら、日が暮れる」
「・・・・・・何で知ってる?!」
幾分低い声で、声が少しかすれたが挑むように聞き返した。
「お前。何故そんなことをしたのだ?」
「・・・・・・」
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