第1章

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 気が付くと、涙が溢れて止まらなかった。  不要だと思う僕の基準は間違ってたのか?僕は生きていい?  辛くて、謝っても許してもらえなくて、期待にも応えられなくて、誰にも愛されなくて。誰も愛せてなかったと知った。 「おや。少し洗浄時間が短くなったようだ。天日に干してさっぱりしたら、また戦えばいい。のんびり生きるもいい。長い人の世。戦いも多かろう。誤解もされるだろう。裏切られるだろう。生きるのは大変だ。それでも生き抜くのだよ」 《ピッ、ピッ》  頭の上から水が降ってくる。どんどんたまる。液体が入ってきた。  泡が僕を包み込んでいく。汚れが取れるだろうか?  ほんの少し生き抜くために、逃げてもいいだろうか?  みんなごめんなさい。僕はいい子に見られるためにみんなを利用した。    みんなの事も僕のことも大切なのに・・・・・・。 ―――――――――― ―――――――― ―――――― 《ピー、ピー、ピー》 「終わったかな。うむ、少し黄ばみがあるな。まぁ、それはこの子の『味』とういうやつだ。そこまで取ってはつまらん人生になるからな」  これは、生きるための洗濯機。  辛くて苦しいと溜まってしまう汚れを、罪も悪意も感じなくなった心を、誰かを恨みすぎる心。そういうのをよく洗って、キレイにして生き延びるための洗濯機。
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