モノクロ教室

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教室の戸を開けたら、そこにはモノクロの世界が広がっていた。 夏休み明け、始業式の朝は気だるい。ほぼ手付かずで溜め込んだ夏休みの宿題を、残り数日でこなし、昨日も徹夜だった。 ぼぅとする頭で、欠伸を何度も噛み殺し、いつものように教室の後ろの戸を開いた。 ___はずだった。 黒板、教卓、列ごとに並んだ机。光が差し込む窓に、暫く使われていなかった教室の少し空気の籠った匂い。 目の前に広がる光景は、見慣れた日常のそれなのだけれど、色が消えていて、白黒だ。 私は自分の両手の平を確認した。 赤みを帯びた肌の色だ。日に焼けて浅黒くなった手足。セーラー服の紺色の襟、赤いスカーフ、その下の紺色のスカート、紺色のハイソックス。私には色がある。 ならばこれは夢なのだろうか?現実の私は、夏休みの宿題をしている途中で、自分の部屋の机の上で眠ってしまったのではないだろうか? 思い切り自分の腕を、指先で摘まんで捻ってみた。痛い。痛みを感じる。 辺りをキョロキョロを見渡しながら、石像のように動かないクラスメイトの間をくぐり抜ける。
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