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仲良しの彩美ちゃんは、隣の男子と笑いながら話してる姿で静止している。
野球部の須賀くんは教室の後ろのスペースで仲のいい男子と、ビニール傘をバット代わりに野球ごっこをしている。
その他にも、終わらなかった夏休みの宿題を広げたり、女子のグループで集まっていたり、ありふれた変わり映えしない朝の光景のはずなのに、モノクロ映画を一時停止したみたいに、静かで色が消えていた。
「彩美ちゃん、おはよう」と私は彩美ちゃんに声を掛けた。返事はもちろんない。隣の席に向かって、にっこりと微笑んだままだ。
彼女の肩に触れてみた。石のように固かった。髪も頬も、人とは思えない程、ひんやりとしていた。
呆然としながら、自分の席にカバンを置いた。紺色だったはずのカバンは私の手を離れた瞬間、白黒が侵食するように、色が消えていった。
嘘でしょ?その瞬間を目の当りにして、息を飲んだ。一度色を失ったカバンを持っても、本来の色に戻ることはなかった。
うちのクラスだけなの?
そうだ、外は?私は普段通りに登校して来たはずだ。
窓際に駆け寄り、ガラス戸からベランダに出てみようと試みた。___けれど、戸は開かなかった。
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