第一部 11章 木屋

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 「なぁ衣吹お前が降参するなら後でいいもんやるぞ?」  まず、かまをかけてみる。  「そんな後でなんて私を子供扱いしないの!どうせ大したものじゃないんでしょ?」  当然の如く断られる、さっきの脅しで夏鈴が動揺しているから一対一で話せるのはデカい。  「そうか、そんなに要らないのか。じゃあ今あげたら降参してくれる?」  人間、後と今では信用の度合いがかなり違くなり当然動揺する。  「へ、今できるの?でも私を喜ばせるなんてそう簡単じゃないよ、あ・な・た?」  すこし耳を傾けた、この言動は次の行動次第で降参してくれるかもしれない。  相手を騙す時はリスクを負い必ず失敗の時のプランまで考えること。  俺には衣吹がどう答えようとその対応が頭に浮かんでいる、この状況は一番無難なやり取りだ。  「うーん、俺はこれをやるのは初めてだが果たして衣吹は降参してくれるかな?」  さらに衣吹の興味を引かせる、これで乗ってくれば即決行だ。  「え?始めてやるのそれ、マジックかなにかって、、、!!!!」  興味を引いたところで俺は衣吹の肩を掴みキスをする、クラスの全員が声をあげる、一番大きかったのは美秋の声だ。  勿論長く、早すぎると何が起こっているか理解できないままに終わるからだ。  手を肩から腰に回し強く抱きしめる。  女性はこういう手の使い方が好きらしい、前に冬夜に聞いたことがある。  そして俺は唇を衣吹の唇から話し耳元に近づけ囁く。  「初めてのキス、ファーストキスがいいものさ。衣吹、降参してくれるかい?」  すると衣吹は座り込み顔を真っ赤にさせ俯く。  さすがにやりすぎたか?  「こ、こ、降参、します。」  「森宮棄権によりリタイヤ!」  これがペテンの技、炎冥と冬夜に魔法士よりペテン師の方が向いてるとまで言われたほどだ。  座っている衣吹の前にしゃがみ込みニコッと笑い「ごめんね」と謝る。  「そんなの反則だよぉ旦那様。けどこれで夫婦の契りはできたよね、結婚しよ!」  俺は「その話はまた今度」と言うと夏鈴の方を向く。  「夏鈴、覚悟できてっか?」
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