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なんで、最初の場所にいたんだろう。もう一度、あの商店に行って、あの子が居るのかどうか聞かなければ。居なくなっているのであれば、やはり警察に通報しなければ。そう思い、車を走らせたがいくら走っても、あの商店は見つからなかった。
確かに、お婆さんがやってる商店がこのへんにあったはずなのだ。
メグミは麓まで降りて、ようやく民家の前で住民を見つけてたずねた。
「あの山の中に「十間村」ってところがありますよね?そこで、子供が迷子になったんです。私の子供じゃないんですけど。金髪の男の子で・・・。」
そうしどろもどろに説明すると住民は戸惑いながらメグミに告げた。
「そんな村もお店もあそこにはありませんよ?あのへんは、誰一人住んでないはず。ましてや、金髪の外国人の男の子が迷子なんて。」
頭がおかしいとでも、思われたかもしれない。
夢を見ていたんだろうか?とりあえず、メグミは警察に行き、その風貌の男の子が行方不明になっていないかをたずねたが、そういう行方不明の届けは出ていないとのことだった。メグミはさんざん不審者扱いされて、2時間後ようやく解放された。
いったい、あの体験はなんだったんだろう。メグミの中からすっかり本来の目的が削げ落ちていた。あ、私、自殺しに行ったんだっけ?
もうすっかり、その気が失せているのを不思議に思った。ただ、ひたすら眠かった。眠りたかったのだ。
死に損ねたメグミは、ぼんやりと自分のアパートの前の公園のベンチに腰掛けていた。これからどうしたらいい?
キィーコ、キィーコ、キィーコ・・・。
ブランコをこぐ音がした。
ふと顔をあげると、ゆらゆらと立ち上る陽炎の向こうにブランコをこぐ、金髪の男の子が見えた。
あっ、とメグミが立ち上がると、側にお婆さんが居て、その子にメロンパンを差し出していた。
「食うけ?」
嬉しそうに笑った。
男の子はメグミに気付き、メロンパンを半分に割ると、こちらに差し出した。
もうすぐ夏が来る。
メグミは生きることにした。
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