第1章

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 しばらく歩くと、大きくて枝の太い木を見つけた。ここにしよう。 メグミは周りを見回し、少し大きめの岩を探した。手ごろな岩を見つけると、華奢な腕でそれを木の下まで運んだ。その岩の上に乗り、ロープを枝にかけると、しっかりと輪にして結んだ。あとは、これに首をかけて、この岩を蹴ればいい。  ロープに首をかけようとした時、ふと誰かが居るような気配がした。振り向くと、そこには金髪の外国人のような風貌の男の子が立っていたのだ。 何故、こんな山奥に子供が一人で?男の子はキョトンとして、メグミを見上げていた。 メグミは仕方なく、岩から降りて、その男の子に声をかけた。 「どこから来たの?日本語、わかる?」 そう声をかけても、キョトンとした表情だった。 困ったわ。日本語が通じないのかしら。 「パパかママは一緒に居ないの?迷子?」 その男の子はメグミの手を引き、歩き出した。 迷子かしら。こんな時に。メグミは仕方なく促されるがまま、歩いた。 すると、少し開けた場所があり、そこには何故かブランコがポツンと一つあった。 なんでこんな山の中にブランコが?突然雑木林の中に遊具が現れて戸惑った。 男の子は走ってブランコに乗ると、こちらをじっと見てきた。 催促するように、ブランコの鎖を揺らした。もしかして、背中を押してほしいっていうの?それより、親はこんな幼い子を放置して何をしているのかしら。探しているのであれば、声くらい聞こえてきてもいいはず。 「パパとママを探しましょう?」 もう一度声を掛けてみたけど、無駄だった。男の子は早くと急かすように鎖を揺らした。 「はいはい、わかったわよ。少し遊んだら、下に降りてパパとママを探そうね?」 そう言うと、メグミはそのブランコを揺らした。 男の子はきゃっきゃとはしゃいで喜んだ。 そう言えばリョウタも、ブランコを高くこぐのが好きだったっけ。危ないよといくら注意しても、高く高くブランコを揺らした。しばらく、ブランコで遊ぶのに付き合っていたら、日が傾いて薄暗くなってきた。そろそろ夕闇で何も見えなくなってしまう。 「もう暗いから、帰りましょう?おばちゃんが下まで送ってあげるから。」 すると、ようやくその子はブランコから降りて、メグミの言うことを聞いてくれた。
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