事実は小説より奇なり

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「君……それ、どこで手に入れたんだい?」 「え……?」 私は駅員さんに突然話し掛けられ、些か驚いてしまう。ここを使って一年半になるが、こんな事初めてだった。 「この本ですか?ここに置いてあったので、暇潰しに読ませてもらっていたんです」 「……そんな、そんな筈は……」 そんな事をぶつぶつと呟いている彼の顔は真っ青で、今にもふらりと倒れてしまいそうだった。 「あの、これがどうかしたんですか……?」 「……」 彼は話すのを躊躇うように俯いたが、暫くしてからぽつぽつと話し始めた。 「先月の電車への飛び込み自殺の事は君も知っているだろう?」 「ええ、大騒ぎでしたからね。それとこれに何か関係が……?」 「その子がいつもここで読んでたんだ。大好きな小説だったらしくてね。一緒に火葬した筈なんだ。だから、ここにある訳ないのに……」 小説の裏表紙を見ると、そこには自殺した子の名前が記されていた。
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