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「おっ、ホントにやってくれるんだな」
「当たり前だ。
それから、お前の親戚を探す。
親戚を告訴するかどうかは、向こうの態度次第だな」
「ああ……うん」
すると利奈は、急に沈み込んだ。
「どうした?」
「いやさ、金取り戻せるのは嬉しいよ。
だけどさ、昨日ヒジリが言ってた事に似てるけど、あたしと兄貴から金巻き上げて、騙してた奴等を懲らしめるって事は、色んなヤツから金盗んだあたしも、キザな言い方だけど、罪償わなきゃいけねぇのかなって……」
聖は箸を置き、利奈を見つめる。
「利奈」
「何さ」
「お前は今まで、不幸だったか?」
「ああ、不幸だったと思うぜ。
今時、腹減ってぶっ倒れるヤツなんていねぇだろ?
あたしは何回もぶっ倒れたぜ!」
「だったらいい」
聖はそれだけ言って、食事を再開した。
「ハァ?
意味解んねぇ」
利奈は首を傾げながら、箸を動かした。
****
その日の夜。
聖は一人でバー【フラハイト】に訪れた。
店はそれなり繁盛している。
聖はカウンターに座る女性の後姿を見つけると、その隣に陣取った。
「いらっしゃいませ。
聖さん」
「レミーマルタンXO(エックスオー)」
「かしこまりました」
マスター姿が消えると、隣の女性の方から聖に声を掛けてくる。
「来て下さったのですね」
「お前に興味が沸いたからな」
「それは、ご好意と受け取っても良いのでしょうか?」
「言葉通りだ。
それ以上の意味はない」
「あら、つれないですね」
女性は美しい横顔に、美しい笑みを浮かべた。
そんな二人を見ながら、マスターは静かに現れ、ブランデーグラスを聖の前に置いた。
「その節は失礼しました。
打った麻酔は強いですが、適量でしたので後遺症や副作用が出ることはないと思います」
「お前は自分の仕事をしただけだ。
気に病む必要はない」
「あら、嬉しいですわね」
そう言って、女性は白いカクテルを飲み干した。
「マスター。
おかわりを頂けるかしら」
「はい。
またプリンセス・メリーでよろしいでしょうか?」
「ええ、お願い。
クリームは多めにして」
「かしこまりました」
再びマスターが姿を消すと、女性は顔の正面を聖に見せた。
「改めて、初めまして。
細流(せせらぎ)と申します。
その筋では【運び屋】と言われています」
「聖飛鳥、探偵だ」
細流は更に微笑む。
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