0人が本棚に入れています
本棚に追加
そのバス停を訪れると、先輩はいつものように静かに本を読んでいた。
隣に座って、俺はいつもと同じように先輩に話しかける。
しかし、いくら喋っても先輩がこちらを向くことはない。当たり前だ。先輩はもうこの世にはいない。――いないんだ。
B「先輩……俺、ここに来るの今日で最後にします」
A「……」
B「みんな前に進んでる。俺だけ立ち止まってるわけにいかない…ですよね?」
A「……」
先輩は何も言わない。ただ、本を読み続けるだけだ。切なさに唇を噛みしめた。
B「じゃあ、俺行きますねーーさようなら」
やり場のない気持ちを断ち切って、ようやく腰を上げる。
出口まであと一歩のところで、背中を強く押された。
振り返ると、嬉しそうに目を細める先輩が立っていた。
A「ーー頑張れ」
その声に、笑顔に、懐かしさが込み上げた。溢れる涙を乱暴に拭くと、俺は深く深く頭を下げた。
最初のコメントを投稿しよう!