事件二 深夜〇時の怪

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 取り壊す理由は、老朽化によるものだという。ほとんどの住人は、近くにあるアパートに引っ越してしまったらしく、今、ここに住んでいるのは、大家さんと、老夫婦、浪人生の男性の四家族だけだという。 「みんな、お金がないから、安くて住むこのアパートに残るしかないのです」 「他に行くあてもない、そういうこと?」  三島由香はうなずき返す。 「私も、その一人でしたから」  彼女はそういうと、アパートの中へと入っていった。私と香織君も、彼女の後を追うようにして、アパートの中に入った。 「なるほど、二階に住んでいるのは、あなたたち家族と、老夫婦だけみたいだね」  私は、郵便受けに書かれている名前を見てそう答えた。 「二階建の家なのに、住んでいるのは四軒ですか。それまた、豪勢なもんですね」
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