第1章

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寂れたバス停のドアを開くと少女が座って本を読んでいた。その手は楽しそうにページをめくっている。 B「何してるんだよ、こんな所で」 自然に声が漏れ出た。ああ、でも違う。そんなことを言いたい訳じゃない。 男の葛藤をよそに少女は一区切りついたのか本から顔をあげた。 随分と懐かしい光景だった。 手を伸ばしてもギリギリ届かない距離。それが何だか寂しくて、悲しくて。 B「何してんだよ。何してんだよ、今更、こんな所で。こんな廃線になったバス停で」 10年前、1人の少女がいた。 いつもここで本を読んで、突然いなくなった。 後で亡くなったとだけ聞いた気がする。 話しかけておけばと後悔したことを今でも覚えている。視界にライトがともった。廃線になったはずのバス停にバスが1台とまったのだ。 彼女はきっとそれに乗るのだろう。 最後に1度こちらを見た。 さようなら。 それは男の彼岸の思い出。
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