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寂れたバス停のドアを開くと少女が座って本を読んでいた。その手は楽しそうにページをめくっている。
B「何してるんだよ、こんな所で」
自然に声が漏れ出た。ああ、でも違う。そんなことを言いたい訳じゃない。
男の葛藤をよそに少女は一区切りついたのか本から顔をあげた。
随分と懐かしい光景だった。
手を伸ばしてもギリギリ届かない距離。それが何だか寂しくて、悲しくて。
B「何してんだよ。何してんだよ、今更、こんな所で。こんな廃線になったバス停で」
10年前、1人の少女がいた。
いつもここで本を読んで、突然いなくなった。
後で亡くなったとだけ聞いた気がする。
話しかけておけばと後悔したことを今でも覚えている。視界にライトがともった。廃線になったはずのバス停にバスが1台とまったのだ。
彼女はきっとそれに乗るのだろう。
最後に1度こちらを見た。
さようなら。
それは男の彼岸の思い出。
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