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「急にどうしたの?」
「はあ…はあ…、だってもう会えないかも知れないだろ?」
「おおげさねえ、来年またここに来るわ。
あなた今日は変ね、焦っている感じ。」
「そりゃあ焦るさ!
時々君は急に頭が良くなって、僕の知らない人間になる。
僕の知らない君は、僕の知らない街で、僕の知らない人々と、僕の知らない小説を読み、僕の知らない歌を歌い、僕の知らない偉い事をして、どんどん僕の知らない離れた存在になってゆく。
今日君が東京へ帰ったら、そのまま僕のことを忘れちゃうんじゃないかと思って…。
だから君の記憶の一番に刻みこまれたいんだ。」
「フフ、バカねえ。だけどあなたの純粋さが私に足りない大事なものを補ってくれる。
たとえどこにいようと、たとえ何をしようと私は私。だからあなたを絶対忘れない。
ありがとう。またこの季節に会いましょう。」
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