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「ミサキ。また見たのか。朝日」
「うん。笑ってた。朝日と、筆記道具の話、した」
眼鏡は眉間に皺を寄せ、ベットから降りて私との距離を取る。
したくない話を、自らする。麒麟は、馬鹿だと思う。
麒麟は未だに小学生の頃みたいに、私に片思いしていて、だから付き合っていた朝日の気配が感じられるのを嫌っている節がある。朝日そのものは、麒麟だって、好きだったのに。
自分から話し掛けておきながら、居たたまれない表情をする。
「ミサキ。お前、死んだ奴のこと考えるの、止めろ」
リスカ中にホットヨガのことでも考えろと言うのか。
「うるさい黙れ。ぺろぺろ舐め太郎」
「う」
麒麟は小学生時代、あろうことか私のリコーダーを舐めた上に、それを忘れ物を取りに教室へと戻った私に見付かるという、とんでもねえ前科を持っており、そのリコーダー舐め事件からというもの、幼馴染みでありながらに、私からは非常に軽蔑され、『変態クソ眼鏡』あるいは『ぺろぺろ舐め太郎』と呼ばれるに至る。合掌。
「失敬な。舐めるなど、挨拶のようなものだ」
「即刻お国へ帰れ。人生舐め太郎」
うちの近所に住んでいる人間にも通じない挨拶は控えて頂きたい。
「もっと良いものを舐めさせてやろうか」
「人生どころか人間の沽券まで舐め腐るとは良い度胸だ。強姦クソ眼鏡」
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