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「水城そうた。27。システムエンジニアをやってる。」
彼は静かに必要な情報だけを述べた。
へぇ。27なんだ。私より三つ年上なのね。でも若そうにみえる。
そんな事を考えてると彼に、睨まれ自己紹介をさかされた。
「んっと、涼水りんっていいます。24です。今は仕事は休業してます。」
休業と言葉にしたとき、明らかに彼の顔が引きつった。
「あの、すみませんが私去年大きな事故に巻き込まれたみたいでその記憶がすっぽり抜けてしまっているんです。」
そう。私にはすごく大切な記憶がぬけている。絶対に忘れてはいけない、大事な大事な記憶が。
そういって顔をあげると彼にこう尋ねられた。
「なにも?なにも覚えてないのか?」
うん。と頷きながら彼の顔色を伺うが彼はなにか考え込むように黙ってしまった。
そっとしておこうと思い、周りをみると泣いている人やわーわー叫んでる人壁を殴ってる人など様々な光景が見えた。
私がはぁーとため息をついた時彼は何か呟いたような気がした。
「……た。」
え?耳をすましてもう一度きいてみるが、彼はもう最初の顔に戻っていた。なぜ、あんな怖い顔をしていたのだろう。
彼がさっき呟いた言葉が気にかかる。すごく頭に響いたのだ。多分私にとって大切な記憶の一つの欠片のピース。
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