一章

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 すぐさまヘッドフォンを外して彼女の方を振り向いた。というか声が裏返ってた気がする。それになぜこいつに従わなければいけない道理がある? と、言った後に後悔した。 「あなたさ……やっぱいいわ」  ――何のために呼んだんだよ!  ダメだ。こいつと話すと必ずムカつく。だからといって無視をすればさっきのアレだ。マジツンデレうぜぇ…… 「ああ、後ヘッドフォン外してくれる? 別にわたし気にしないから」  いつもの如くスマホを弄って会話するあいつに更に怒りが湧き上がる。別にあんたを思ってヘッドフォンで聴いてるんじゃねーよ!  眉間にしわを寄せながら俺はパソコンの方に顔を戻した。ヘッドフォンは首に下げて端子を抜いた。もちろんこれでパソコンから音が流れる訳だが、なぜあいつの言う事を聞いたのか? 簡単な話だ。俺がイライラしないためにはあいつがイライラしなければいい。ならばあいつの指示に従っていればいいだけだ。ここら辺は某電子の歌姫の曲を聴いてて思った事を実践したまで。  それにやましい物を見聞きしてる訳でもない。もちろんそういうのを見たい時はあるが、あいつが来てからは自重してる。  しかしいつまで居座るのだろう? 監視が終わるまでと言ってた気がするが、このままずっとなどという事はあり得ない。というかあってほしくない。そこまでするならもうラブコメの様に母さんにばれたけど母さんは何食わぬ顔という展開に――いやいやあり得ないあり得ない。逆にそうなったら母さんの頭を疑ってしまうか、俺が狂ったと思う。 「どうしたの?」  俺が眉間にしわを寄せ、目を瞑って考え込んでいるのを見て心配してるのだろう。というか今日はよく喋るな。 「何でもない」  ――あんたのせいで悩んでいるんだよ。  ツンデレは鈍いというのがセオリーだが、実際分からん。一応俺は顔を戻してディスプレイに視線を移した。 「大丈夫?」  その声を聞いて右に振り向くと彼女が眼前にいた。どうやって!? 音や気配なんて――いや待て。なんだそのキョトンとした顔は! あ、あざとい……! 「なんか顔真っ赤だけど?」
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