一章

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 俺が横たわっていたのはソファだった。それも応接用に向かい合ったソファの一つを占領していたようだ。ガラス張りのテーブルにはコーヒーが一つと炭酸飲料が二つ。コーヒーは銀髪の女性の。後の二つは分かるだろう。しかし、なぜ俺がコーヒー飲めないことを知ってるんだ? 大体のこういう場合は全員コーヒーというのがセオリーと思っていたが。横たわっていたソファには俺が一人。テーブルを挟んだ向かい側にミライと銀髪の女性が座っている。 「それじゃ、あなた。富士真くんね? 急にこっちに連れてきちゃって悪かったわね。この子が言う事聞かないから」 「話が全然違うからよ。こいつのどこに能数十があるのよ!」  さっきから訳の分からない言葉を連ねているがはっきりと分かるのはこいつが指を差して罵倒しているという事と、それに俺はイライラしているという事だ。 「誰も能数十があるとは言ってないわよ。ただ、イレギュラーな存在だということよ。それは証明できたでしょ?」 「何よ……ただエラー吐いただけじゃない」 「能機にエラーはあり得ないわ。ただでさえ、今までエラーなんて吐いたこと一度も無いのに……」  銀髪の女性は少し俯いて思考しだし、彼女は炭酸飲料の缶を開けて飲みだした。  ――完全に置いてかれてる……  唯一はっきり分かったのは世界が違う。この人達の世界観には入れないということ。いけない組織に介入されるのか、はまたま選ばれし者にでもなれと言われるのか……とにかくこれでフラグは回収された。 「あっ、ごめんなさい。勝手に思考するのは悪い癖ね。そういえば私の名前言ってなかったわね。谷風春奈(たにかぜはるな)、ここの所長よ」  正直、名前を言われてもその前に色々と疑問が湧き過ぎて、そんなことどうでもよくなっていた。 「谷ちゃんもあまりこいつには近づかない方がいいわよ。ちょっと可愛くするとすぐ落ちるから」  ではさっきの「大丈夫?」とか言って近付いたのはわざとだったのか……やっぱこいつあざとい…… 「いいじゃない。男の子らしくて。こういう子好きよ」  そう言って笑顔を振りまく谷風春奈と名乗る女性に俺は少し好意を寄せつつあった。
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