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くろねこコマタロウちゃんはある冬の寒い日に、ひめしゃらの木とブナの大木が茂る雪に覆われた森の中で濃紺色や黒色の毛並みをチラつかせながらブルブルと震えて凍えているところを森を愛する優しいお兄さんに拾われました。
コマタロウちゃんはまだ子猫だったので産まれてすぐに母猫から引き離されたのでしょうか?飼い主にでも捨てられたのでしょうか?それとも母猫とはぐれてしまった迷子ちゃん?
いづれにしても拾ってくれたコマタロウちゃんは初めてミルクを飲ませてもらいました。そして飼い主となってくれたお兄さんはコマタロウちゃんに初めて名前を与えてくれました。
お兄さんは言いました。
「困ったなぁ、こんなに凍えてしまって・・・。よし、名前はコマタロウにしよう!おい、コマタロウ、今度は誰も心配させちゃいけないよ。」
お兄さんは優しくコマタロウのあごの下や首根っこをくすぐりました。コマタロウは目をつぶってそれはそれは今こそが至福の時とばかりに嬉しそうでした。
お兄さんが名前をコマタロウと与えてくれました。与えてくれる、ということは名前だけでなく嬉しいことです。自分の存在が在る、ということなのです。すごく嬉しいです。コマタロウちゃんはとてもそのことが嬉しかったので優しいお兄さんにも何か呼び名をつけてみたくなりました。
お兄さんに拾われて、可愛がられてこの上なく幸せなコマタロウちゃんでしたが、さてさて問題はお兄さんに付ける呼び名がまだ思い浮かばないのです。もちろん考えるのをさぼってなんかいません。たくさんたくさん毎日考えていました。
くろねこコマタロウちゃんは考えました。
「お兄さんの呼び名は優しいから優二さん?優介さん?なにがいいかなぁ?」
ある日、急にコマタロウはぴったりの呼び名をお兄さんのために考えつきました。
それは、“モーリーさん“!
くろねこコマタロウちゃんにとってその呼び名こそ、これがいちばん!と心から思いました。コマタロウはだってだって森の中で命の危険もある中、優しい優しいもモーリーさんに助けられたのですから!
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