くろねこコマタロウちゃん

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 モーリーさんは森の小屋の番人でした。寒い冬は森から季節が冬になる前の段階で集めた細かい木々や枯れ葉や薪で炭をおこしながら火を炊くのがとても上手でした。森の外れの村の人と仲が良かったので村のいちばん大きい共同牧場での乳牛のミルクや自家製バターやチーズ、ヨーグルトを手に入れることが簡単にできました。そしてその牧場のミルクをいちばんにコマタロウに飲ませてくれるのでした。  季節が春から夏へと変わる新芽が勢いづくころ川のせせらぎで川魚も釣ってくれました。これも一緒に友達になったコマタロウへのためのひとつ愛情でした。  コマタロウはモーリーさんと毎日毎日一緒に過ごすことが楽しくてたまりませんでした。  あるとき、コマタロウは不安で不安でいっぱいになってしまいました。母猫を覚えていないコマタロウは自分が失われることがとても怖いのです。モーリーさんが村の共同牧場に行ってしまってから一日が経ちました。モーリーさんはいつもだったらその日に帰ってくるのですが夜中になっても帰ってきません。くろねこコマタロウちゃんは一晩中泣きあかしました。あまりに大きな声で泣きすぎて、また悲しくなって心が張り裂けそうでした。  とうとうコマタロウちゃんはのどを痛めてしまい泣くこともできなくなりました。  そうです。コマタロウちゃんはもう可愛く「ニャーニャー、と鳴くことができなくなるくらいに泣きつくしてしまったのです。  翌日、モーリーさんが急いで帰ってきました。モーリーさんもモーリーさんの事情で困っていました。でも、今、目の前にいるコマタロウちゃんの声が出ないことが分かったモーリーさんは状況をすぐ察して涙ぐんで、コマタロウを町まで連れて行きました。町の動物病院に連れていくためです。
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