6 秋祭りの夜

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「零央くん。今日もお疲れさん」 「いえ、ありがとうございます。いただきます」  今夜の晩飯は、榊先生、奥さん、初琉と俺の四人。榊教授は明日まで不在だ。 「今日は、どないやったかな?」 「はい。実は、黒塚古墳の調査記録で三角縁神獣鏡の――」  榊先生の、教授よりはいくぶんフランクな声かけに、その日の成果と疑問点、自分なりの考察について話を進めていく。 「零央くん。今日の餃子ね、はーちゃんが『二種類作る!』言うて、張り切って作ったんよー。ちょっと量が多いけど、零央くんのために作ったから食べてやってね」 「おばあちゃん! 別に零央のために張り切ったわけちゃうしっ」 「あ、どれも美味しいです」  本当に旨い。連日の屋外での作業で、さすがに残暑の疲れも溜まってきていたが、このエネルギー補給で明日も頑張れそうだ。  ここに滞在するようになって、約一ヶ月。ひとつ、変わったことがある。  初琉が家族の前でもそう呼ぶからか、榊家の皆さんからの呼び名が、気づけば『宮城くん』から『零央くん』に変わっていた。
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