6 秋祭りの夜

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「お茶、ご馳走様でした」  奥さんにも報告しなくてはと、湯呑みを持ってキッチンに入る。 「あ、わざわざありがとうね。零央くん」 「いえ。ところで、先生には先ほど御報告したんですが、来週の火曜から水曜にかけて大阪に泊まりで出かけてきますので、よろしくお願いします」 「えっ、火曜日っ?」  え?  食器を洗っていた初琉が、奥さんよりも先に反応したことに驚いた。  何だ? 「そう。ほな、来週の火曜日は夕飯は要らんてことやね。水曜日は、どう?」 「あ、同じ研究室の友人と一緒に行動しますので、水曜日も外食してきます。そんなに遅くならないように帰ってきますので。すみません」 「かまへんよー。お友だちとひさしぶりに会うんやから、ゆっくりしてきたらええわ」  俺を振り向いた初琉が気になったが、奥さんに視線を移して頭を下げる。  そして頭を上げて初琉を見た時には、もう背中が向けられていたために、その表情を窺うことはもう出来なかった。  初琉? 今の反応は、何だったんだ?
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