14人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあさ、面白い話してあげるよ」
若干不満気な顔をしていたエクだったが、何を思い付いたのか、ぽんと手を叩いて言った。
エク自身、暗い空気になるのが耐えられなかったようだな。
「これから行く町なんだけど、2週間くらい前にその町を通ったら、ボクの知り合いが変な物拾っててさぁ」
「変な物ですか。それは気になりますね」
デックが相槌を打った。どうやらこいつも初めて聞く話らしい。
「それがさ、漁船の投網に掛かったらしいんだけど、でっかい石の塊なんだって……しかも」
ここでエクは、周りの反応を窺うように見回した。
「それも、ただの石じゃなくて、魔物を引き寄せるんだって!こわいよねぇ!」
おもしろい……のか、この話は?
というよりも、むしろこの話が本当なら、相当マズイ事になるんだが。
「それは……国王には言ったのか?」
「言ってないよ。だって余計な心配事増やしたくないし」
頬を膨らませ、エクは「言えるわけないじゃん」と呟いた。
こいつは、自分がどういった立場の人間かが分かっていないらしい。
おそらく、こいつが普段やっているように、ただの一般市民として対応している時にその話をされたのだろう。
市民だったら「へぇー、こわいねぇ」で済む話かもしれないが、お前はその国の王妃様だろうが。
デックの血の気が引いているみたいだが、エクよ、これが普通の反応だぞ。
「その話を聞いたのは、いつですか」
「だからぁ、だいたい2週間前だよ。デックも一緒にいたじゃんっ」
「基本的に別行動というか、王妃様、いつもひとりで出歩かれるではないですか。私は初耳です」
あのデックが、ちょっと焦っている。
ここまでされて怒らないとは、さすがデック。
最初のコメントを投稿しよう!