第5章 【破滅の剣】

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「じゃあさ、面白い話してあげるよ」 若干不満気な顔をしていたエクだったが、何を思い付いたのか、ぽんと手を叩いて言った。 エク自身、暗い空気になるのが耐えられなかったようだな。 「これから行く町なんだけど、2週間くらい前にその町を通ったら、ボクの知り合いが変な物拾っててさぁ」 「変な物ですか。それは気になりますね」 デックが相槌を打った。どうやらこいつも初めて聞く話らしい。 「それがさ、漁船の投網に掛かったらしいんだけど、でっかい石の塊なんだって……しかも」 ここでエクは、周りの反応を窺うように見回した。 「それも、ただの石じゃなくて、魔物を引き寄せるんだって!こわいよねぇ!」 おもしろい……のか、この話は? というよりも、むしろこの話が本当なら、相当マズイ事になるんだが。 「それは……国王には言ったのか?」 「言ってないよ。だって余計な心配事増やしたくないし」 頬を膨らませ、エクは「言えるわけないじゃん」と呟いた。 こいつは、自分がどういった立場の人間かが分かっていないらしい。 おそらく、こいつが普段やっているように、ただの一般市民として対応している時にその話をされたのだろう。 市民だったら「へぇー、こわいねぇ」で済む話かもしれないが、お前はその国の王妃様だろうが。 デックの血の気が引いているみたいだが、エクよ、これが普通の反応だぞ。 「その話を聞いたのは、いつですか」 「だからぁ、だいたい2週間前だよ。デックも一緒にいたじゃんっ」 「基本的に別行動というか、王妃様、いつもひとりで出歩かれるではないですか。私は初耳です」 あのデックが、ちょっと焦っている。 ここまでされて怒らないとは、さすがデック。
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