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「魔物を呼び寄せる石なんて、そんなものがあるの?」
この話に付いてこれない子がもう1人。
「どうかな。でも世の中には結界石なんて物もあるから、その逆があっても変じゃないな」
そう言いながらも、俺は脳内でこれまでの仕入れ品を思い出してみた。そんな妙な物は、俺の店先には並んだことはない。
だが、実際にそんな物が存在するから、今現在、問題になっているのであって。
「そうだよ結界石っ、町の周りには結界石があるだろ。だったら別に心配しなくても、魔物は入ってこられないじゃん」
よかった、とばかりにエクは飛び跳ねたが。
結界石の力と、その謎の石の力がどれくらいあるのかによるだろうな。
もしも、その謎の石が結界石の力を上回ってしまうのであれば、ウィステリアは魔物だらけになってしまうおそれがある。
それを確かめるためにも、早いところウィステリアにたどり着ければいいんだが。
「デック、あそこに何か見えるよ!」
再び何かに気が付いたチェルシーが、船の先端、前方にある何かを指した。
よく見ると、それは黒いもやのよう。
「…………おいおい、勘弁してくれよ」
思わず呟く。
眼前には、水平線を覆う大陸の緑が見えた。
なんてことはない。あれが、俺たちが向かっているイストリア大陸だ。
問題は、その一部分。
黒いもやに見えていたのは、目を凝らせば、飛行する魔物の群れだった。
その数は数千、いや、数万?
「よし、引き返すか!」
「ばかっ!ダメだよっ!」
聡明な俺の判断は、2秒と待たずしてエクに一蹴された。
いや、お前がいるから引き返さざるを得ないんだろ。
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