第5章 【破滅の剣】

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「別に、無理する事はない。お前が嫌なら戦わなくていい。恩に報いる必要なんてない。あいつは気にしちゃいないよ」 「……分かっているつもりです」 分かってないよ。 エクは、誰かに恩返しをしてもらうために色々とやってる訳じゃない。むしろ、そんな恩着せがましい事は大嫌いだ。 ……なんて、腐れ縁の俺が言う事じゃないけどな。 「王妃様に呪いを掛けたのは、誰なのですか」 デックが言いたかったのは、やはりこの事か。 エクがああやってふざけているのは、実は恐怖の裏返しだ。 あいつをずっと見ていた俺だから分かる。 呪いを一番解きたがっているのは他でもない、あいつ自身だ。 だが、呪いが解かれた時、自身はどうなってしまうのだろう。 そして、あいつがその身をもって守ろうとした誰かは、どうなってしまうのだろう。 それが怖い。 だから、あいつは誰にも言うことができずにいるんだ。 「それがさぁ、俺にも分からないんだな。というかあいつ自身、記憶が無いみたいなんだよ」 そう。 残念な事に。 エクは大事な仲間の誰かを助けるために、呪いにかかった。 けど、肝心な、その“誰か”についての記憶が一切無くなってしまったらしい。 デックの隣に行き、俺も船べりに肘をついた。 「俺も考えた事があるよ。 呪いの根源になった奴を殺せばいいんじゃないかってな。でも、それが誰か分からないんだと。ウソを付いている訳でもないようだし、ほんと、お手上げってやつだ」 「そうですか……」 デックは見るからに落胆した表情だった。 「俺は一国の主でも何でもないから、あいつらがどんな考えを持っているかはよく分からないが、いくらセックスしても愛する人の子供ができないってのは、相当苦痛だろうな」 「…………はぁ」 返事が鈍くなったのでそっと窺うと、耳まで真っ赤になったデックが俯いていた。 おぉ、これこそ若者の反応だ。 若い、若いぞデック! なんとなく優位になった気分だ!
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