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翌朝、俺たちは無事上陸した。
昨日の事は敢えて多くは語るまい。
眼鏡は無事、それだけだ。
船着き場を出るとすぐ目の前に、上へと続く階段が伸びていた。
予想していた通り、人の姿はない。
代わりに、町のあちらこちらで闊歩する魔物の姿があった。
銀翼の怪鳥シルバースカイスパロウ、猛毒を霧状に吐く蛇パンパサーペント、動きの鈍い代わりに一撃が重い巨大熊ホックスベア。
この辺りの地域で接触する魔物だ。
初めて見る町の風景に驚いたチェルシーが、口を開けたままきょろきょろし始めたので、俺が手を引き、とりあえず近くの建物に身を潜めた。
一度戦闘になってしまえば、騒ぎを聞きつけた他の魔物たちが集まってきてしまうからな。
「ここからは慎重に行こう。エク、セイ・スティラーの家まで案内してくれ」
「え、なんで知ってんの?!ボク、あの人が石持ってるなんて言ったっけ?」
奇人、セイ・スティラー。この町で知らない人はいないと言われる名前だ。
金属で造られた円形の地面、建物の要所に嵌め込まれた謎の歯車。カラクリとかキカイと呼ばれる箱が、建物間を繋ぐワイヤーの間を行ったり来たりしていた。
町の中央には、背の高い塔が建っていて、その天辺からは、避雷針のような細長い金属の棒が、まっすぐ天に向かって伸びている。
ここから見える海岸の岸壁には、水車のような輪がいくつか回転していた。以前聞いた話では、その回転を動力にして、発明の動力源にしているらしい。
言わば、この町全体がセイ・スティラーの「研究所」という訳だ。
「変な物を町に置いておく変な奴は、あいつ以外考えられないからね」
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