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「っ……!」
旨い!
……訳もなく、俺は口に含んだ苦い液体を無理矢理喉に流し込んだ。チェルシーは口元を押さえ、エクに至ってはそもそも舐めただけらしく、それでもしかめ面をしていた。
デックは眉をひそめ、少し不思議そうな顔をしていたが、どうにか飲み込めたらしい。
「子供にコーヒーはちょっと早いよね。でも、少しくらいは飲んでおいてくれよぉ、イイモノ入ってるからさ」
そのニタニタ顔でイイモノと言われると、どうしてもいかがわしいモノが入っているとしか思えないんだが。
「そういえば、コーヒーの香りですね」
思い出したように、デックが呟いた。
もしかすると、イストルランド周辺ではよくある飲み物なのか。
シェンは早々に自分のコップを空にすると、白衣を脱ぎ、木箱の上に置かれていた丈の長いコートを羽織った。
何が入っているのか、重そうな白い肩掛け鞄を下げ、スリッパを脱ぐと、代わりに革靴を履きなおす。
「そいじゃ、行きますか」
「行くって、一緒に来るの?」
「とーぜん。アニキの尻拭いは不出来な弟の役割ですからねぇ。塔までの近道をお教えしますよ」
一緒に付いてきても邪魔になりそうだったので、俺としてはここに残っていてもらいたかったのだが、案の定、チェルシーとエクは大はしゃぎだ。
「ところで、どんな武器を使うんだい」
戦闘になった時の参考にしたかったので尋ねると、シェンは意外そうに肩をすくめた。
「こんな格好で戦えると思います?あなた意外と抜けてますねぇ」
「はは、フォー抜けてるってさ!」
「お前には言われたくないよ」
やっぱり腹のたつ男だが、エクが楽しそうにしているのを見ると、それでもいいような気がする。
やっぱり甘いのか、俺は。
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