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「軒下だ!」
俺はそれだけ言うと、赤い屋根を持つ民家の軒下まで転がった。
魔物の追撃が来ないことを確認してから空を仰ぐと、手を伸ばせば届きそうなほど近い場所に、今まさに着地しようとしている巨大な猛禽の身体があった。
深紅の羽毛に、まだらな緑色の嘴。
見た目だけでも禍々しい。
あれは、ブラッディ・イーグルか。
「お前ら無事か?!」
チェルシーは向かい側の建物、エクは公園の木の下、シェンは、
「いやぁ、驚きました。はははー」
俺の隣。
デックは唯一、どこにも隠れていなかった。むしろ俺があいつの姿を捜している間に、ブラッディ・イーグルの間合いに入ると、眉間めがけて大剣を振りかざしていた。
「あ、あれはいけない」
「何だって?」
シェンが呟き、俺が聞き返す。
その、僅かな間。
『ギシェェエッ!!!』
猛禽の咆哮が、まるでサイレンのように辺りに響き渡った。
その声が肌を震わせる。
見ると、デックが突き刺した刃が魔物の眉間深く、鍔の辺りまで突き刺さっている。
それでもまだ息の絶えないブラッディ・イーグルは、不気味に飛び出たギョロ目でデックを睨み付けながら、まるで大剣を抜こうとするかのように、大きく首を振り回していた。
「今ので上の奴らが騒ぎだしたね。大変だ、急がないと」
全く急いでいる様子もなく、シェンはコートに付いた羽根を一本ずつ抜いている。
「2手に分かれよう」
左肘に刺さっているブラッディ・イーグルの巨大な羽根を抜いたあと、シェンはその羽根で、俺と、チェルシーを指した。
「君と君は俺の護衛。そっちの剣士とエクっちょは塔の最上階にいるアニキを打ちのめして来てくれ」
打ちのめしちゃ駄目だろ、それよりこいつはエクの事、なんて呼び方してんだ。
「護衛って、どこに行くつもりですか?」
大剣を担いだデックがやって来た。
さっきの一撃で仕留めたのだろう。デックの背後で横たわるブラッディ・イーグルは、もう叫び声を上げない。
代わりに、空がだんだん騒がしくなってきたようだが。
シェンは腕をぶんぶん振り回し、準備体操を始めていた。
組んだ手を前に伸ばし、うーんと唸る様子はさしずめ老人だ。
「発電所。新型の結界発生装置ができたから試してみようと思ってたんだ。君たちが来てくれたから、助かったよ」
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