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「それじゃ、俺達も行こうか」
エクとデックの姿が建物の裏に消えるのを見守ってから、俺はチェルシーに声をかけた。
さっきから空が騒がしいだけではなく、建物のそこかしこから、がさごそと何かが這い回る音が聞こえていた。
……こりゃ、俺達も急いだ方が良さそうだ。
「走ろう。シェン、発電所はどこにある?」
「まっ、まっ、待ってくれよ」
何故か動揺しているシェンが、後ずさりを始めた。
「なん……」
「フォー、危ない!」
聞き返す間も無い。
突然、背後からチェルシーの声が聞こえた。
さっきまでちょっと離れたところにいたよな、そう思いながら振り返ると、俺に背を向け、チェルシーがよこざまに杖を構えていた。
そのチェルシーから僅か1メートル先、何かが地面の辺りで痙攣している。
巨大な蛇の魔物、パンパサーペントだ。
「おぉ、かっこいいなあ魔法使い」
シェンがニタニタしながら拍手をしている。どうやらチェルシーが、俺の背後にいたパンパサーペントをやっつけてくれたようだ。
ちなみに、物理攻撃で。
「ありがとう」
そう言うと、チェルシーは返事の代わりににっこりと微笑み、再び俺に背を向けた。
なんだ、随分頼もしくなったな。
とは言え、辺りを見渡すと、いつの間にか俺達は囲まれていたようだ。
非常事態になったら、あの武器を使うしかない。
デックとエクという主戦力が不在の今、俺がやるしかないわけで。
「なるべく穏便にいきたかったなぁ」
腰元から引き抜いた刃を構えると、俺はすぐそこまで来ていた巨大な蛇の頭に一撃を食らわせた。
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