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「よっ、いいね、その調子っ」
身体に不釣り合いな、巨大な牙をもたげる蛇と対峙し、俺は聞こえてくる場違いな声援にイライラしていた。
この広場にいる魔物はざっと見、20弱。
その大半が、さっき港でみつけたパンパサーペント達だ。
見上げた空には、スパロウの他にも何種類かの魔物が飛んでいる。
先程のブラッディ・イーグルが仲間を呼んだせいだろう。その数は次第に増えていた。
「いよっ、がーんばっ!」
ぱち、ぱち、ぱち…………
シェン・スティラーが、避難中の民家の台所の窓から顔を出して応援している。パンパサーペント達が近寄ってくると、今度は窓を閉めて応援してくる。
声はしなくなるが、拍手をする姿が視界に入ってくるので、かえって煩わしい。
こいつは一体どうやって侵入したのか。そもそも不法侵入だろ。
膝を目掛けて飛びかかるパンパサーペント1体を左手の籠手で払いのけ、右側から高く跳躍してくるもう1体の胴回りを、手にした刃で切り裂いた。
緑色の血しぶきが霧散し、若干眼鏡を曇らせる。
肩越しに振り返って見ると、チェルシーは、杖を使って器用に魔物を追い払っていた。
俺が禁止しているせいか、攻撃魔法はまだ使っていない。
よりにもよって、別れた途端に敵襲とは。
今度は正面方向から3体同時に飛びかかってきた。
気がつけば足元にも2体。
「ッくそ!」
左肩を後方へ移動させ、左耳付近を狙っていた1体の攻撃をかわす。
同じく左腰に飛び付こうとしていた奴の胴回りを左手で掴んで、左肩を後方へ動かすついでにぶん投げた。
後方の民家の壁にぶち当たったそいつは、顔面が潰れて動かなくなる。
中腰になっている俺の頭上を通過していった1体は、縦にまっぷたつに裂いた。
長い間戦闘から離れていた身体にしては、結構やれるもんだ。
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