第5章 【破滅の剣】

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頭がおかしくなったわけではない。 断じて違う。 俺はシェンの元まで駆け寄ると、窓ガラスにへばりつく勢いで、突然現れたその美女を見つめた。 金色の長い巻き毛、紺碧と黒のオッドアイ、そして、薄絹の際どいロングドレス。 間違いない。 シェンの肩に手を当てて宙に浮かんでいるこの美女は、召喚カードの中でもレア中のレア、“月下精霊バラフェン”!! 俺に微笑みかけていた美女は、シェンが手でその姿を払い除けると、まるで煙のように、ふっと姿を消した。 残ったのは、1枚のカードを持ち、相変わらずニタニタ笑いを崩さないシェン。 そして、窓ガラスに映る情けない顔をした眼鏡の男、俺。 「シェン、今のはどうやって……」 聞くまでもない。 シェンが持っているのは、俺と同じ“召喚カード”だ。 魔具ではなく神具と称されるこのカードは、現在の技術では到底作る事ができない。 何故ならその名前の通り、“神”が精霊と契約して、魂を封じ込めて作り出した物だから。 「余りにも時間がかかっているから、ちょっと急ぎたくてねぇ」 それは悪かったな。 「それより、どうして貴重なレアカードをそんな簡単にッ……」 全てを言い終わる前に、シェンが肩掛け鞄から何かを取り出した。 輪ゴムでずさんに留められたそれは、間違いなくカードの束。 しかも、鞄の隙間からは、手にした物の他にも何束か見え隠れしている。 「前に趣味で集めてたんだよね、このオモチャ」 「オモチャ?!うちの店でも滅多に見ない、貴重なカードが、おっ、お……」 駄目だ、落ち着け。 「おっ……お…………“精霊美少女”シリーズはお持ちですか」 興奮しすぎて何故か敬語になってしまった。 「コンプしてるけど、見る?」 「見せてください!」 すまん、チェルシー、2分でいいから。 そんな目で見ないでくれ。
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