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「フォー、シェン、早く!」
チェルシーの声で現実に引き戻されたのは、俺が新しい友人を得てからだいぶ後の事だった。
町がこんな状況でなければ泊まり込んででも話をするのだが、今はエクの護衛という仕事が最優先だ。
「よし、行こうか」
先程より少し重くなったチョークバッグをぽんと叩く。これだけで、今回の仕事は大収穫だ。
「発電所は市街地からやや海側、ここからだと坂を下った方がいいかな」
シェンに言われ、俺は岸壁にあった水車のようなものを思い出していた。
あれが発電の動力になっているのなら、発電所もその近くにあるはずだ。
「海沿いは魔物も多い。チェル、ここからは君の攻撃魔法の力も借りたいんだけれど、できるかな?」
「うん、練習だと何回か出来てるし、大丈夫っ!」
チェルシーは自信満々で胸を叩いた。
シェンがカードを使えるとわかった今、沿岸でも充分に戦えるだろう。
船上で海域の魔物が一切出現しなかったことが少し気にかかるが、すばやく発電所の作業を終わらせてしまえば、魔物は近寄れなくなるはずだ。
俺達は広場を抜け、小高い丘の上までやってきた。
潮風が肌にべたつく。
朝だというのに薄暗く感じてしまうのは、空の高いところに魔物の影が広がっているからだ。
「長居すると見つかるよ、行こう」
シェンに促され、海岸へと続く坂道を下っていく。
途中、何度か魔物に遭遇したが、俺の剣で倒せる相手だったのは、きっと運が良かったからだ。
腕にパンパサーペントの牙を受け、負傷した箇所をチェルシーに治療してもらうため、木陰に身を潜めた。
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