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「チェル、大丈夫?」
俺の膝の傷口に手を当てていたチェルシーが、少しだけ眉をしかめていた。
「ううん……ただ、ちょっと回復魔法が効きづらくなってて……」
かざすチェルシーの両手を見るが、俺には今までとの違いがよく分からない。
「俺がおかしくなった、ってこと?」
「ううん。どっちかと言えば、私の方が変なのかな。回復の効果が薄くなってきてる気がするの」
「そうかな、ちゃんと治ってるよ」
そんな会話を聞いていたシェンが、バッグからまた何かを取り出した。
四角い箱に、細長いチューブが付いていて、その先になにやら丸くて小さな金属が取り付けられている。
「そのままね」
シェンがチェルシーの手の甲に金属を当てると、箱に取り付けられた針が動き出した。
どうやら、魔力を計測する物らしい。
シェンは少しの間、箱の横に付いていたネジをひねっていたが、やがて、針が指し示す数値を読み始めた。
「魔導師が基本的に取り扱う際の初期回復魔法での魔力使用数は、大体15から25オイデン。それで5分後には10センチメートル四方の切傷は完治する。
今回の君の魔力は、それに当て嵌めると、大体40オイデン使用している計算になる。確かに魔力を使いすぎているなぁ」
「それは、どういうことなんですか?」
「詳しくは、もっとよく調べてみないと何とも言えないけど、君、回復魔法が肌に合わなくなってるんじゃないかなぁ」
シェンは珍しく真面目な顔で言った。
どうやら冗談ではないらしい。
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