第5章 【破滅の剣】

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「あぁ。よろしく」 俺は言うが、隣でまだ箱を弄っていたシェンが、今度は少し険しい顔だ。 「シェン、お前はどうした?」 「いやぁ……。ただちょっと、魔力使用量の数値がおかしくてね。壊れたかな」 「全体回復なんだから、少しは数値も上がるだろうよ」 「うーん……いや、ごにょごにょ」 きちんとごにょごにょまで滑舌よく喋っていたシェンだったが、結局それ以上は何も言ってこなかった。 シェンはオータムリーフの魔法には興味が無いのか、チェルシーの魔法を見てもあまり関心を示さない。 まぁ、下手に騒がれるよりは良かったかな。 丘を下ると、半島の突き出た先に、白い箱のような建物が見えてきた。人影はやはり見当たらない。 近づくと、扉の無い入口に、はめ殺しの窓、中は、俺にはよく分からない計器が並んでいる。 部屋の真ん中には、大小の結界石が入った円筒形のガラス瓶が設置されている。 ガラス瓶のてっぺんには黒いコードが巻かれ、それが、屋外のアンテナへと繋がっている。 「それじゃ、作業してるから、後はよろ」 そう言うとシェンは、そそくさと建物の中に姿を消してしまった。 残された俺とチェルシーは、とりあえず建物の入口に座る。 「うまくいくといいね」 新しい魔法を覚えたせいか、チェルシーの表情は明るい。 魔導師が罪人だと知ってからチェルシーはどこか塞ぎ混んでいる様子だったから、この変化は嬉しかった。 「久しぶりに動いたから腕が痛いな。でも、これであっちも動きやすくなるでしょう」 俺は、丘の向こう側にその先端だけが見える電波塔を仰いだ。 今頃は、シェンの兄、セイの所に辿り着いている頃だろうか。 「石を壊してうまくいけばいいけどな」 正直、石の正体が分からない事には対処のしようがなかった。 あいつらが行くまでに、セイが何とかしてくれていればいいんだけれど。 でなければ、あまり考えて行動しないあの2人の事だ、どんな行動を取るか分かったもんじゃない。 普段大人しいデックだが、あぁ見えて単純な奴だから、「いっそ塔ごとぶった斬りましょう」と言い出しかねない。
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