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「それじゃあ、次は空っ!」
チェルシーが、空に向かって右手を伸ばした。
途端、チェルシーの目の前に大木が繁り、見る間に大輪の白い花を咲かせる。
「いっけぇ!」
チェルシーが、今度は下ろしていた左手を空に向かって突き出した。
地表から突風が吹き、大輪の花を巻き上げる。
「これは……」
言葉を失った。
曇天の空だというのに、その花びら1枚1枚が、美しく光り輝いている。
まるで雪の結晶のように、触れば壊れてしまいそうなほど、その花びらは儚く見えた。
「わぁ、キレイ!」
チェルシーも、両手を上げてよろこんでいる。
試しに手を伸ばすが、花びらは俺の指先に触れる事無く、光の粒になって消えた。
「これが……オータムリーフの……」
なんて、美しい。
言い掛けた俺の言葉を遮ったのは、突如として降り注いできた、大量の魔物の死骸だった。
「なっ、なんだ!?」
俺が発電所の屋根に身を隠すのと、そいつらが、まるで人形のように地面に叩きつけられ始めたのは、ほぼ同時だった。
死骸には無数の白い花。
花は魔物に突き刺さり、徐々に赤くその花びらを染めた後、突然、空気に溶けるように消えた。
チェルシーを見ると、無邪気に喜んでいる。
……確かに、魔物をやっつければ嬉しい。その通りなんだけれど…………。
「くっ…………えぇい、こうなったら、俺もやってやる!」
チョークバッグを開き、俺はカードケースを引っ張り出した。
出発前より重くなっているのは、シェンから貰ったカードのせいだ。
その中から、俺は素早く8枚のカードを手にすると、空に放り投げた。
「召喚っ!」
宙に舞ったカードが、たちまち
人間の姿を成した。
正確には、人の形をした精霊だ。
「アルギス、メチオーディ、フェニル、リジィズ、ヒスチス、トリィデン、ロイゾ、バリーリリック、スレイディッツァ。契約者の命令だ!」
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