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「そっかぁ。すごくキレイだったけど、キレイなだけじゃないんだねぇ」
と、チェルシー。お気に入りの場所を褒められて、エクは鼻息が荒い荒い。
「さらにっ、海側から入江に行くと、天井まで真っ青な洞窟があるんだー。クー……国王はそこで静養するんだよ」
お前の旦那なんだから、別に国王って呼び直さなくてもいいんじゃないか。
そんで、名前を呼んじゃった事で今更顔を赤くしなくてもいいんじゃないか。お前ら何年間連れ添ってるんだよ。
俺がこの船に乗って、こうやってバカな事をしているのには訳がある。
簡単に言えば、とばっちりだ。
数日前、あの侵入事件があった日の夜中、わざわざ俺の店にあの国王様がやってきた。
普段から血色が悪い奴だったが、土気色の顔を更に白くして頭を下げてくる。ま、大体の事は予想できてたけどな。
要するに、ウチのワルガキが逃亡を目論んでいるからどうにか阻止してくれ、それが無理なら旅に同行してやって欲しい、と言うことだった。
勿論、最初は拒否したさ。
お前の伴侶なんだからお前が責任を持て。そもそも、外側は違えど俺とあいつはほぼ同い年なんだから、これは子守りじゃなくてデェトだぞ、それでもいいのかって事を、10倍くらい柔らかくして言ってやった。
そうしたら、
「すみません、御手数お掛け致します」
だってよ。
全然分かってないよな。
だから俺は言ったよ。
そうやって俺にばっかりやらせないで、たまにはあいつの首に輪っかでも付けて柱に結んでおいたらどうですか、ってな。
そうしたらあいつ…………いやいや、国王様は、
「そんなことをしたら可哀想です。それに……彼女が心の内を話せるのは、残念ながら、貴方だけですから」
これ以上話しかけても精神と頭皮にダメージを食らうだけだから、二つ返事で了解したよ。
一応王妃の警護という名目だから、たっくさんお金貰えるしな。
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