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剣に付着していた血糊を吹き終わったデックが、ようやくやってきた。
エクの丈を優に越える長さの大剣には鞘が無く、革紐と金具を使って抜き身の刃を背負っていた。
近衛兵が普段着ている銀十字の鎧はそこになく、代わりに簡素な鉄の装備を着けている。
これからイストルランド領に入るから、一般市民から余計な干渉を受けないようにだ。
「回復ばかりで疲れたでしょう。チェルシー、しばらく休んでいてください」
デックは、体の大きさの割りに、とても静かな印象を持つ男だ。俺も会うまでは、エクの近衛兵にこんな男がいたなんて気が付かなかった。
デックはチェルシーを促して、傍らに並んでいる小樽に座らせた。
チェルシーの隣にデックが立って、2人で仲良さそうに談笑している。
こうして見るとなかなかいい雰囲気だし、案外アリかもな…………ッと、オジサンが余計な事を口出しする訳にはいかないな。
「フォーっ、ぼーっとしてないで、チェルシーの代わりに闘ってよ!」
2人の若者の行く末を案じていたら、
エクの鋭い蹴りが尻に決まる。
誰だよ、淑女であるべき王妃様をこんな風に育てたのは。
……俺か。
「あのなぁ、少しは大人しくしてくれ。ゴキゲンにも程があるぞ。お前は王妃様なんだろう」
「関係ないよ。ボク子供だしぃ~」
前言撤回。
こいつは、昔っからこうだ。
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