14人が本棚に入れています
本棚に追加
「その町ウィステリアだろ。来る時通ったよ。相変わらず妙な町だよねぇ」
王妃のお前が言うな。
俺は地図を畳んでポケットにしまった。
「エク、あまり勝手なことをやって国王を困らせるなよ」
「わかってるよ。今回だって、魔導師が、チェルシーが言うようなマトモな人間なのか、事前に確かめてやろうと思ったんだよ」
チェルシーの前で「楽しそうだからまぜて~!旅に行きたい~!」ってバタバタ暴れてたヤツが何を言うか。
「もしその魔導師がムカツク奴だったら、これでメッタメタのボッコボコにしてやるもんね」
エクはハープを両手で持って、それで殴り付ける仕草をした。
使い道がまず間違っているし、その殴り方だと、せいぜい顔に縦線を付ける事しか出来ないぞ。
「わあっ、あれ何っ?!」
チェルシーが歓声をあげた。
視線の先を追うと、海上から伸びた背の高い石造りの柱が数本、列になっていた。
柱のてっぺんからは、大きな丸い金属が吊り下げられている。
「あぁ、あれは罠だよ」
「罠?」
チェルシーが聞き返す。
エクもこれが何なのか分からなかったのか、説明する気は無さそうだったので、ここは俺が説明する事にした。
「この海域には、昔、バフィードリウスっていうドラゴンがいたんだ。あいつらは深海に住んでいたんだけど、音に敏感だったから、柱の先にある鐘を鳴らすと、気になって海上に顔を出す。その隙をついて狩りをしたんだな」
「いた、って事は、もういないの?」
「元々温厚なドラゴンだったからなぁ。あいつらは額の真ん中に、すごく固い角が生えていて、槍なんかの材料になっていたんだ」
「バフィードリウスの角は、ちょっとやそっとじゃ折れませんから、ハンターは皆、海面に出てきたバフィードリウスの頭部を割って、頭蓋骨ごと角を取っていたようですね」
チェルシーの横から、珍しくデックが口を挟んできた。
最初のコメントを投稿しよう!