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「くそぉ!!」
ボンッ!! ボンッ!! ボンッ!! ボンッ!! 山都の拳を絶え間なく叩き込んでいく。サソリの身体に硬度はない。彼の身体はその弱点を補うために、全身を毒出覆うことで克服した。ただし、強度はない。
山都大聖の、獅子の力を発現させた彼の拳はサソリの身体をズタボロのミンチに変えていく。ただし、自分が毒に犯されいく。
勝負はすぐについた。至近距離で、山都の拳を数発、くらっただけでサソリは気絶し、変身を解いたが、同時に山都も限界を迎えた。
「くそっ、いつも同じパターンだな。敵を倒せたのに、俺も死にそうだ」
いったい何度目だと、山都は笑う。今頃、全身をサソリの毒が回っている頃だろう。
「山都くんっ!!」
鏡の世界から、出てきた日傘が、山都を抱き起こした。
「山都くん!! 山都くん!! ねぇ、しっかりしてよ。目を覚ましてよ」
「…………」
顔色はどんどん悪くなっていく
「日傘。揺り動かしちゃダメよ。聞いてたでしょ? サソリって男は、毒を持ってたって!!」
「じゃ、じゃあ、毒を抜き出してみるとか!? けっ、血清とかあるんじゃないの!? 解毒剤!!」
もちろん、日傘にだって、そんなものが都合よく用意できるとは思ってない。山都の顔色はドンドン、悪くなっていき、命の灯火はいつ消えてもおかしくない。
「と、とにかく落ち着きなさい。何か、何か手があるはずよ!!」
鏡子も焦り、言うが何か解決策を思いついたわけじゃない。鏡と蛇。人外の力を持っていても、なんら無力だ。
そして、彼女もまた、無力感に苛まれていた。今日だけで、不可思議な出来事は数多く見てきたけど、だけれど、人が死ぬなんて思ってもみなかった。
(自分には関係ない)
そうだ。
(彼が勝手に戦って、死のうとしているだけだ)
そうだ。勝手に戦って死のうのする。自意識過剰なヒーロー気取りが勝手に死ぬ。
『あいつは、自分の過去と戦ってんだ。理不尽に、不条理に立ち向かってるんだ』
山都の言葉が頭をよぎり、背中のタトゥーがズキズキと痛んだ。
「私は、あんな男なんて……」
ボコッと両手から蜘蛛が溢れ出し、その力の使い方が手に取るようにわかった。この蜘蛛達は自分の身体から、溢れ出した物なのだ。指示を待つように、蜘蛛達が足元に集まる。正直、蜘蛛はあまり好きじゃない。
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