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『まぁまぁ。名前にはちゃんと意味があるんだよ。糸里ちゃん』
と日傘の声と共に、糸里は言った。
「お願い。彼を助けて」
返事はなかったが、蜘蛛達は勢いよく、山都に向かって走っていく。
「なんなの、こいつら、蜘蛛っ!?」
「わっ、山都くんになにするつもりなのぉ!!」
と、騒ぐ二人を無視して、蜘蛛は山都の身体に噛みつき、プクーッと身体を膨らませは破裂していく。
「なんなの、こいつら、もしかして、サソリってやつの仕業?」
「違うよ」
糸里は言う。その蜘蛛達は、
「糸里ちゃん?」
「その子達は、解毒用の蜘蛛なの。山都くんの身体に蓄積された毒を吸い出して、代わりに解毒用の血液を彼に流し込んでる」
両手から蜘蛛を続けて、生み出しながら糸里は言った。
「ごめんね。日傘ちゃん。黙ってたわけじゃないけど、知られたら絶交されると思うと怖かった」
「…………」
「自分が汚れていると思うと、言い出せなかった。日傘ちゃんだけは、まっとうな関係できたかったから」
ごめんと言おうとした、糸里を日傘は人差し指でそっとふさいだ。
「ごめんねは言わなくていいよぉ。でも、山都くんが死んじゃったら、その時は絶対に許さない」
日傘は手袋を脱ぎ、両腕をさらした。蛇の鱗が巻きついた両腕を衆目にさらす。
「鏡子ちゃん。鏡の世界に山都くんを移せる? 人目につきたくない。糸里ちゃんもいい?」
「ええ。もちろん!!」「わかった」
「山都くん。絶対に死なせないからね!!」
日傘は両腕から、蛇を生みだし、山都を慎重に鏡の世界に運び込んだ。
その数日後、二人の少女が水族館の水槽を眺めながら話していた。
「じゃあ。サソリと、その部下はみんな逮捕されたの?」
「そうみたいだよぉ。山都くんが雇われてる会社の人達が後始末をつけたみたいだねぇ。で? そっちはどうだった。スパイダーのリーダーさん」
「解散はしてないけど、今までみたいなことはできないかな。とある会社の下位組織ってこになるよ。今までの犯罪をもみ消すから、うちで働きませんかって言われて」
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