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ずかずかと歩き、布団をはぐ。
「げッ!」
黒のタンクトップに紺色の短パンを履いた女。
隣人である、米田香保里。27歳。
俺の4つ年上。
ただのしおらしい女ならいいんだが、この女は手ごわい。
いろんな意味で。
まずその1。
米田香保里は寝相が凄く悪い。
現にほら、タンクトップがめくれて腹が丸見えだ。
ホントに女かよ……。
そっとめくれあがったタンクトップを直しておく。
目のやり場に困んだよ。
無駄に色白いし、顔は普通にしてれば美人の部類に入る。
なのに、その美人をかきけすような私生活。
「おい、起きろ。アンタいつもいつもわざとかよッ。目覚ましかけたならちゃんと自分で消せ!」
その2。
叫んでも起きない、眠りの深さ。
「おい!香保里さん!」
身体を揺らすと、かるく身じろぎして、こちらを向く。
「……ん」
「……」
無駄に色気出してんじゃねぇっつーの。
「香保里さん!」
「……」
近くで名前を呼ぶと、うっすらと目を開け、こちらを見つめる。
「やっと起きたかよ」
「……紘くん?」
「起きろ。遅刻すっぞ」
「……おはよー」
聞いてるのか?
「アンタ目覚ましの意味ないんじゃないの?ちゃんと一人で起きろよ。俺が来るまでどうやって起きてたわけ?」
「春が起こしにきてた」
「ハァ……」
春っていうのは、香保里さんの仕事仲間であり、親友らしい。
本当に、ダメダメだな。
「紘くんー。ご飯ー」
「……」
何故か、俺はこの人の世話係、みたいになっている。
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