第1話

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「ウチよりは相当リッチかもだけど、それとこれとは話は別じゃない?食費は二人分かかるし」 「多分そんな事気にしなくていいと思う。もしあの桐谷だったらそこ心配するとこじゃないし、俺あのオジサンと知り合いになりたい位」 午前中の人通りは少なく静かに時間が過ぎ、レイアウト変更も話も進んでしまう。 「で?食費の他は何でウジウジ悩んでるの?」 こちらは真剣なのに、もう半笑いでからかうように言われてしまっている。 「生活費とか、仕事辞めたら私の収入もなくなるし」 お互い分担してお金を入れる夫婦もいると聞いた事があるし、何も考えず飛び込む勇気が少なくなるのは、ある意味大人の証な気もしていた。 「そこは旦那が稼げばいいんじゃないの?」 「でも働かずご飯食べさせてもらうのも悪いし」 「そんな事言ってたら誰とも結婚できないじゃん!」 『仰る通りです』 話せば話すほど、墓穴を掘っているようで心苦しかった。 「まだ決心つかないならこっちに逃げてくれば?気が済むまで働いて、それから将来の事考えれるよ?」 遅番の子が来たので一旦話は終了した。 朝礼をして暫くすると『人が少ないので今のうちに休憩回しませんか』と提案してきて従う事にした。 当然だけど神崎君も一緒に行くようで、先程の話で呆れられてたし、恥ずかしいので俯き気味になる。 「今日はここ行きませんか」 神崎君が誘ってくれたのは色んなお店が集まってるフードコードなので、ファストフードでもたこ焼きでも自由に選べるのでいいかもしれない。 ザワザワした感じなので話声も気にならないし、目立たない角の席を取って注文しに行った。 私はクレープに決め、神崎君はチャーハンのセットを選ぼうとしていた。 「それオヤツでしょ?ご飯食べたらどうです?」 軽く注意されてしまったが、話をしてヘコんでる部分もあるので食欲があまりないのが本音だ。 先に出来上がったのでクレープを手に席に戻ったが、すぐ食べる気にもならずボーッとしていた。 「お待たせしました。先に食べててもよかったのに」 神崎君も席に座ると並んだ状態で食べ始めた。
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