第1話

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「はい、もし具体的に決まるようでしたらお伝えします」 話をしていると入店がありまた接客開始になったが、神崎君も他のお客様についている。 『私が余計な事言って帰る時間遅らせたかな……』 気にはなっていたが、とりあえず接客に集中し売り上げに繋がった。 「良かったです、今日入店少なかったから」 神崎君が嬉しそうに言ってくれるのは有難いが、こちらは帰りの時間が大丈夫か気になって仕方ない。 「あの、神崎さん時間大丈夫なんですか?」 「大丈夫です今日は直帰しますし、あ!佐々木さんが新店の店長されるという事でしたら延ばす事も出来ますよ?」 ニコッと笑いながら恐ろしい事を言うので、新店の事も具体的に決まっていないですよねと濁したが『目星はつけてます』とだけ言われた。 遅番の子が帰って来て少しすると、一旦帰るが来ますと言われて神崎君は店を後にした。 見送るとやっと仕事が終わり肩の荷が下りた気持ちになる。 スタッフの子も安堵の表情だったので「いつものペースで頑張ろう」と接客に戻る。 今からはイケメンはいないけど、入店が少しずつ増えているし気合も入り、タイミングよく新作の入荷もあったので目新しいのかもしれない。 夕方休憩もきちんと取り、帰り際に点検レシートで売り上げを確認するとギリギリ達成していた。 「良かった、少し安心して帰れる」 「入院の時から無理して出勤されてるんで、もうお帰り下さいね!」 その言葉に甘える事にして、早々に帰る準備をした。 スマホを確認すると拓斗のお迎えがあるようで足取りも自然と軽くなる。 今回は疲れたし二人でゆっくりしたいなと従業員出口から出ると、目の前に彼の車が停車していた。 『そんな近くに止めなくても……』 でも気遣ってくれているのが分かって嬉しい。 「お疲れ様、歩くのキツイかと思ってここに止めちゃった」 「有難う、助かります」 介護してくれる息子みたいな台詞だったが、今は有難く受け取って素直に従う事にした。 「昨日は急にご飯になってごめんね。かなり強引だったし、もう神崎君帰ったから安心して」 「ううん。楽しかったよ、色んな話出来たし」 あまり気にしていない様子でホッとしていると、いつものコースで私の家で荷物を取って来る?と聞かれた。 何度かこのパターンがあったので気を回してくれたみたいだ。
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