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「やっぱりメイちゃんは妻と同じ事考えてたんだね……」
俯いたままの私を諭すように語り掛けるノブちゃんだが、このパターンが一番やりづらいというか、拓斗本人より気まずい。
ノブちゃんは何も悪くないし、私と拓斗が別れたとしても責任は感じなくてもいいのにここまで来てくれるなんて。
「以前は短縮しましたが妻も『主』みたいになるまで色々ありまして、私は妻の為に今の仕事を始めたのに、彼女と一緒に居れないなら辞めるって駄々を捏ねまして……彼女は考えを改めてくれた訳です」
ノブちゃんの目はまた遠い記憶を見ているようだ。
「見た目は違うとはいえ、妻にそこまで似てる人をアヤツが選ぶのも、やっぱり血筋なんですかね」
私どう答えていいか分からず、戸惑ったように目を泳がせていた。
「これから予定は入ってますか?」
無言で首を振ると、少しお付き合い頂いて宜しいですかと聞かれ、運転手さんが静かに車を発進させた。
「相手を考えて行動する人は素晴らしいと思いますし、事情がありお互いに諦めてしまう事も定めなのかもしれません」
ドキンとしたが遠回しに別れる事を責めるつもりはないと言われてる気がしていた。
「でも勝手に誤解をして離れるのはとても悲しい事です。それが原因で私は今まで独身だったかもしれないのですから」
ノブちゃんが言ってる事が自分に当てはまってるので、何となくバツが悪い。
「私は居なくなった彼女をどうしても諦めきれなくて探し当てたんですが、その時に言われて気付いたんです」
サラリと言ってるが、ノブちゃんがそんな情熱的な部分がある方だと思ってなかったのでギャップに驚く。
「あなたの事を思って身を引いたのに!って逆切れされて、こちらは平謝りですよ」
ノブちゃんは薄っすら目を閉じ、当時を思い浮かべてるようだ。
昨日の事のように鮮明に覚えてるって、奥さんへの愛情は測りしれないし、そこまで気持ちを注げる人に出会えたのは運命かもしれない。
人の感情は小さな事をきっかけにいとも簡単に崩れたり、元の関係に戻れなくなる。
奥様の為に宝石店を立ち上げたというだけでも凄いのに、成功を収めているなんて、愛のチカラは人によって化けようは様々。
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