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「彼女がそんな事気にしてたなんて思いませんでしたが、言葉の端々に出てたんでしょうね。私は『あなたの為に店を開いたから絶対について来てくれる』と勝手に安心してたんだと思います」
不意に目を開けたノブちゃんは微笑んでいた。
「メイちゃんがアヤツを嫌いで別れるなら何も言いません、不器用だしつまらないし。でもそうでないなら、好きな人と共に歩む事をお勧めします。彼女は亡くなりましたが、一緒に過ごした時間は宝物で、約束も果たして満足してます」
「――約束?」
「ええ、『彼女の最後を見送る事』で、その後はご自由に人生を楽しんで下さいと」
ハッとして拓斗の言葉が重なってきた。
メイを見送ってから天国に行きたいと言っていたのはこの事からかもしれないと。
「お強い方だったんですね」
「はい、私は尻にしかれっぱなしでした」
ノブちゃんの表情がやっと明るくなってきて、奥様の事が今でも大好きなのが伝わってくる。
「メイちゃんも妻と似ている所が沢山あるんです。覗きゲームをしたり、楽しかったんですよ私。アヤツの事は関係なしでお友達になりたい位です」
「私なんかでは……」
「ダメですよ、自分を卑下しすぎるのは。選んだアヤツや私を卑下されてるようで悲しくなりますし、謙遜と卑下は違うと思いませんか?」
そう言われると何となく納得してしまう。
「あ、そうそうこれを食べようと買って来たのをすっかり忘れていました」
ショッパーを見ると私も大好きなチョコレートのお店で、自分のご褒美に買ったりしている。
「ここのお店はお好きですか?」
「大好きです!」
ちょっと興奮した自分が恥ずかしいが、ノブちゃんは包みを開けると色んな種類のチョコが入っていたが迷わず一つ選んだ。
白のシェル型のチョコレートで、ホワイトチョコと中に柔らかいキャラメルが入り最高で絶対に食べておきたい。
「ふふっ、私もそれ大好きです」
ノブちゃんは四角いい形を頬張っていたが、基本的にここの商品はどれもハズレがない。
二人で何事もなかったかのように食べていたが、そういえば拓斗はこの事を知ってるのかと疑問が湧いてきた。
「無論アヤツには内緒です」
表情で分かったのか茶目っ気のある意地悪なウインクしている。
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