第2話

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「今日はお店に呼んだ理由をお見せしたくて伺いましたが、勿論二人だけの秘密です」 ノブちゃんの考えは全く想像出来なかったが、拓斗に伝えてないと分かった時点で少しホッとしていた。 気がつけばあの時の地下駐車場に止まっていたが、おととい来たばかりなのに苦い記憶が甦る。 でもノブちゃんは降りてみませんかと促してくるので、気は進まないが覚悟を決めてドアを開けた。 ロビーを通り過ぎてお店の前に行く際、何となく辺りを見渡してしまうが渡部さんの姿はなさそうだ。 この前入った場所から更に奥に入るとドアノブが何箇所か見えたが、店内の雰囲気に飲まれないようなるべく下を向いて歩いた。 ノブちゃんはその内の一つのドアを開けると手招きをしている。 小さな部屋の中にはテーブルと椅子があり、壁には店内よりも豪華な作品が展示されていた。 「ここで『覗きゲーム』で遊びたかったんです。オーダーのお客様のイメージをお伺いする部屋なので、色んな種類の見本原石や加工した石が揃ってますし、ワクワクしませんか?」 確かに興味は湧いてくるが……今はそんな事してる場合じゃと思っていても何やら準備をしているので静かに椅子に座る。 「今日は二十代と思う子はすべて選んで下さい」 黒い布の上には十粒ぐらいダイヤが乗っていて、ルーペも準備してあるが、まず目で見るとどれも凄く綺麗だった。 一つずつルーペに透かしていくと、窓際だったからか今回は見え方も違っている。 ノブちゃんはすべて見終わってからのコメントが楽しみだと思うので、作業を黙って進めていった。 選んだ石は二つで、ノブちゃんは『なんで?』とワクワクした目でこちらを見ている。 「今回は光の入り方のせいか鮮明で、右の女性はシャワーの見え方や身体がバッチリだったし、下からライトを照らしたように白っぽい光を帯び絵にしたい位でした。左も綺麗ですが若干黄みがかってたので、二番目にしました」 「他にばっちり見えた二十代はいませんか?」 ノブちゃんはポーカーフェイスで、試しているのは分かるが他に思い当たる人はいなかったので「他はいません」と断言していた。 「ふふっ、楽しいですな」 他の石をケースに戻すと、二つの石を今度はリングの台座に乗せている。
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