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「大丈夫ですよ、後部座席は外からは見えにくいですし、生存確認だけしておきたいので」
『――生存確認?!』
ゾクッとするような発言が出てきたので何も言えなくなり、玄関から少し離れた場所に車を止め、運転手さんとノブちゃん外に出て行った。
車内に残された私はビクビクしている。
合鍵らしきものを使って中に入って行くのをただひたすら見つめていたが、暫くすると運転手さんだけが戻ってきた。
「中はジュースのパックが散乱してて、彼は作業室の椅子で眠っていました。旦那様はもう少し様子を見てから出ると仰ったので一人で戻って参りました」
何となく早く離れた方がいいと胸騒ぎがしている。
「あの、拓斗とノブちゃんを二人にして大丈夫なんですか?」
「熟睡されてるようだったので大丈夫だと思います」
ノブちゃんが出てきたのでホッしていると、少しして拓斗も出てきてドキッとして腰を低く保った。
ノブちゃんは振り返り何か話をしているが、遠目から見る彼は、髪は少しボサボサしていて顔周りは少しやつれたように見える。
運転手さんの真後ろの位置から見ているが、ズキッと心が痛む。
『拓斗ご飯食べているんだろか……』
そんな心配をしていると運転手さんが「あ、マズい」と声をあげた。
猛ダッシュで拓斗がこちらに向かって走りだし、ノブちゃんも負けじと後を追う。
「私が押さえますがとりあえず外に出て逃げて下さい、間に合いません」
「え――っ?!」
ドアを焦ってガチャガチャいわせ何とか開けると、後ろを振り返らず私も走った。
ホラー映画のワンシーンのようで、必死に逃げる姿は鬼気迫っていて、振り向くと地獄に引きずり降ろされると暗示でもかかりそう。
『何で私がいる事がバレてるの、ノブちゃんいわないって言ったのに!』
パンプスでかなり走りにくいが、逃げながらも道路沿いを走った方が後々拾って貰いやすいかなと思考はまだ冷静だ。
山沿いの道路はアップダウンが激しく運動不足の私の息切れは早かったが、全速力で距離も稼いだし追手は来ない気がした。
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