隠レ坊

　まずはざっと教室内を見渡します。男の子の姿は影も形もありません。かくれんぼなのですから当然と言えば当然です。

　次に女の子の視線は自然と、縦長のロッカーに向けられます。

　この教室内に隠れるとして真っ先に思い当たるのが、掃除用具が入ったロッカーであろう。クラスの男子も掃除中、たまにふざけて中に入ったりしている。入る際、中の掃除用具が邪魔だが、あの男の子の小ささなら用具を外に出さずとも余裕で入れるだろう。

　などど推理した女の子は、迷う事なくロッカーの扉を勢いよく開けました。

「わ！」

　開けると同時に声を出し男の子を驚かせようとした女の子でしたが、中にあったのは箒やチリトリ、バケツといった掃除用具のみ。男の子の姿はありません。

　女の子はつまらなさそうに頬っぺを膨らませ、扉を閉めました。