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遠く、視界の隅に明るい色をとらえて少女は顔を上げる。
廊下の向こう、金髪の男子学生が職員室から出てきた後、真っ直ぐこちらに向かってくる。
少女は思った。
だぁーっ?? ちょっと勘弁してよ、いつもこういうタイプに目を付けられるんだから。誰が何の為に髪を黒に染め直したと思ってるの。伊達眼鏡かけて、好きでもない文豪の小説なんか持ってるのに。
「七村 咲、じゃない?」
聞き覚えのある声に目を丸くする。驚いて見上げると中学当時とはイメージが真逆の顔に、学年一の秀才の面影が微かに残っていた。
「海谷くん、どしたの?それ。」少女は呆然とした。
「そっちこそ、外見が随分落ち着いたみたいだけど。本当に七村?」
一体、私は何の為に・・・。
彼女は目を瞬かせる。
「そういや、七村も生徒会役員だろ?俺もなんだ。よろしくな」
軽く挨拶して彼は去っていった。
彼女が見た目を誰の為に変えたのかは、また別の話。
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