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ガリガリ、ガリガリ。
一本の棒が地面を浅く削る。
浅く削られた溝に、はらはらと少女の手から粉が撒かれる。
村の広場では大じゃんけん大会が開かれていた。
「あいつらはなにをやってるのかなー?たのしそうだなー」
ガリガリ。
山の一部から、ここまでくるのに4日かかった。
パラパラ。
じゃんけん大会を横目で見る限り、負けた方が喜んでいる。
「やまぶきさまー!!」
元気な声が別な方向からかけられたので、少女は首を回してそちらを向く。
「おお…えっと……少年」
にこにこと駆け寄ってくる少年はコケた。
「やまぶきさま、いい加減僕の名前覚えてくださいよ…」
「顔は覚えてる。それでいいじゃないか少年」
ひとりで納得して頷いている。
良くないですよ、と少年は多少いじけた。
ガリガリ。パラパラ。
その間も少女は作業の手を止めない。
いつの間にかじゃんけん大会は終わったようで、村人達が二人の会話に聞き耳をたてていた。
「で、やまぶきさま、何をしているんですか?」
「マーキング」
マーキング?と少年はおうむ返しに尋ねた。
優勝した村人が小さくガッツポーズした。
「旅に出ようかと思ったのだ」
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