2人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
フリーター、鈴木一郎が働いている深夜のコンビニエンスストア。ンブレインブセに一人の男性客が入ってきた。
「しゃっせー」
一郎の気だるそうな声がコンビニの店内に響きそうで、響かなかい。店内には男性客と一郎の他に人はいない。
レジに立っていた一郎は足が痒いのか足をかこうとしゃがんだところ。
バン!と一発の銃声、それから火薬の鼻につく匂いが店内を包んだ。
「ひゃっ」
一郎のコンプレックスでもある女性のような高い声が今度は店内に響いた。
男はガタガタと体を震わせながら一郎に銃を向ける。
「きゃ……か、金をぉっ、金をぉだすぅぇぃえええいっっ!」
初めての事に戸惑いを隠せない一郎が放った一言は男の怒りを買う。
「じ、自分の財布ってことっすか?」
「ん、んにゃわけあらすかぁっ!!」
「おろしてないんで、今ちょっと、二千円くらいしか入ってないっす」
そこで一瞬の沈黙が店内に流れる。その沈黙を最初に破ったのは銃を構えた男だった。
「あのさぁ、お前の財布に幾ら入ってるとかいいんだよ」
「え、いやいや。金を出せって言いましたよね?」
「え?ちがーうよー。レジのね、レジの中にある金を出せって言ったの!」
そこで一郎はほっと胸を撫でる。
「なんだぁ、レジの金ね」
「そうそうそう。レジの金を出せってこと」
「しゃっしたー」
一郎はそう言うとレジの中を開け、金をカウンターに取り出し置いた。そこでふと一郎の脳内に疑問が浮かぶ。
「あの、お客様」
「え?まぁ、お客様じゃないけど、なんだよ」
「温めますか?」
「え、どゆこと。おじさんその質問の意味を理解するのに一万年と二千年くらいかかりそうなんだけど」
男の言葉に一郎は笑いをこらえられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!